昨年度の障害福祉サービス等報酬改定においては、人材確保対策が重要な課題となっていることや障害者が希望する地域生活の実現に向け、全体では1.12%のプラス改定となりました。当法人としては、決定された内容を精査するとともにこれに対応し、県指導監査や第三者評価制度などを通じ適切な運営とサービスの質の向上に努めてきたところです。
昨年度は、グループホームを9月より1か所(定員4名)閉鎖し、10月より新たに2か所(定員10名)開設しました。また、12月より多機能型福祉事業所としていた「あぶらや」を就労継続支援B型の事業所とし、より効率的な運営を目指すこととしました。人材確保対策については、物価上昇の影響や最低賃金の大幅な上昇を勘案した賃金の引上げを実施するとともに、積極的な採用活動や外国人人材の採用もしてきたところです。職員数は、令和7年1月1日現在216名、前年同月比5名の増となっています。資金収支における事業活動による収入は、令和5年度決算で12億82百万円余りであり、令和6年度は、報酬改定の影響やグループホームの増設などによりこれを大きく上回るものと想定しています。また、以前からの課題であった施設内での事故防止のための施錠について、段階的な開錠に向けて検討、実施してまいりました。スポーツ・芸術活動については、積極的に取り組んできました。芸術活動においては、東総文化会館ギャラリーで利用者さんの作品による展示会を開催したところです。
令和7年度は、現在の10か年計画(平成29年から令和8年までの計画)における利用者数(施設入所、通所、GHの利用定員)の目標を概ね達成したことから、新たな長期計画の策定作業を行うことにより、長期的視野をもった事業運営について共通認識を形成することとし、引き続き、適正な職員数の把握に努め、賃金上昇を伴う人材確保を図り、各種研修制度や資格取得制度を通じた人材育成に努めてまいります。また、障害者が希望する生活を実現するために重要な役割を担う相談支援について、質の向上や提供体制を整備していくこととします。一昨年度から本格的に始動した芸術活動については、利用者さんの表現活動としてより定着したものとなるよう計画してまいります。これらを通じ、障害者が希望する地域生活を実現する地域づくりに貢献するとともに、より安定した経営を目指すこととします。
さて、昨年は一年を通じ重要な選挙が相次ぎ、その影響も含め将来を見通すことは容易ではありませんが、適切な法人運営のため、法人の置かれた状況を俯瞰的に観察し、将来に向けた長期の目標を定め、その方向性を共有することとします。一方で、日々の業務や習慣の積み重ねは更に重要です。日々の業務や習慣が将来を決定づけるといってもいいのかもしれません。
習慣は「両刃の剣」とも言われ、2年、5年、あるいは10年後に振り返ってみて初めて、良い習慣の価値と悪い習慣の代償がはっきり分かるといいます。1パーセント良くなるか、1パーセント悪くなるかの選択は、その瞬間には大したことではないように思えますが、長期で見ると、これらの選択が、今と、なり得る未来との違いを決定するといいます。また、成果はなかなか現れるものでもありません。
角氷の話を紹介します。寒い部屋のテーブルの上に角氷が置いてあったとします。仮に-10度だったとしましょう。少しずつ温度を上げいきます。-9度、-5度、-1度、0度。-10度から0度は10度の温度上昇ですが、氷が溶け出すことはありません。しかし、0度から1度になった瞬間に溶け始めます。これまでの温度上昇と変わらぬ1度の変化が氷を溶かします。進歩とはこういうもので、日々の習慣の積み重ねが功を奏し、ある日突然のように目に見える形で成果として現れるもののようです。
視野を広く持つと同時に、日々の積み重ねを大切にする一年としたいと思います。
社会福祉法人 槇の実会 理事長 市原 良治